[コラム] いしだのおじさんの田園都市生活
第10回 里山で福祉
15年ほど前だったか、
業界の先輩の方から言われた。
「いまさら茗荷村でもないよね」と。
未だにどういう意味だったのかよくわからないでいる。
その後、その手の論議もなく過ぎてしまった。
今一度考えてみると、
「ユートピアを作ろうという時代状況じゃあないよね」
「福祉も(奉仕ではなく)普通の仕事だよね」
あるいは、
「社会を変えようという夢より、現実的な社会参加だよ」
というような、時代と福祉のあり方の話だったのか。
あるいは、個別グリーンに関して、
「障害者と農作業っていうのも、もう発想が古いよ」
「グリーンのやろうとしていること、あんまり現実的じゃないよ」
とまで、言いたかったのかもしれない。
まだ、グリーンの農が確立していないころだった。
『茗荷村見聞記』という本がある。
小説のような、童話のような話である。
1971年に出版され、79年に映画化されている。
本は一度絶版となったが、数年前に再版となった。
先輩は私がこの本を読んでいることを前提にして話した。
もちろん私は読んでいた。
今、私が同じように話せる同僚後輩はどれくらいいるだろうか?
(グリーンにはかつてこの本が2冊あったが、今は0冊。
みんさん、借りた本はちゃんと返しましょう。)
自然豊かな村でのんびりと暮らす人たちの話。
主人公が馬車で村内を案内されるなかで村の様子が紹介される。
焼き物屋、無添加食品の居酒屋、麦飯を食わせる宿屋、喫茶店、
老人ホーム、発電所、劇場、そしてもちろん田畑。
そこで暮らし働く住人は、「精薄」「チエ遅れ」と呼ばれる人や、
(入所施設などで)その「指導」をしていた経験のある人。
「ココハ愚者ノアソブトコロ、賢者モキタリテアソブベシ」
著者はそこにユートピアを描いている。
手元に本がないので、詳しい「紹介」は別の機会に譲る。
なぜ、この話を思い出したかというと、
老人ホームである。
私が暮らし働く青葉区は老人ホームが多くある。
なかには里山の雑木林や田畑を削って建てられているものも多い。
そのことは、「ひねもす里山」に「森が削られて」http://nora-yokohama.org/satoyama/002/post_63.htmlとして書いたのだが、
土地の確保ということでは、そうならざるを得ない。
緑が減り建物(施設)が建つことは残念であるが、
老人ホームなどの施設は「必要」ではある。
残念であるが、反対はできないし、代替案も簡単には浮かばない。
建てられたからには、「よい福祉」をしてほしい。
しかし、「よい福祉」がどういうものかは、簡単ではない。
そこで、ひとつ思うことがある。
里山に立地していることを「よい福祉」の材料にできないかということだ。
里山にありながら、「福祉」が建物の中に限定されては残念だ。
(が、残念ながら現状ではその可能性が高い)
鳥やカエルの声が聞こえる。
緑の中を渡る風を感じられる。
田畑の周囲を散歩できる。
さらに、利用者さんたちが農作業をする。
昔取った杵柄という方もいるだろう。
そこでできた野菜や米を食べる。
介護度の高い利用者さんにはなかなか難しいだろうが、
介護を受けながらの農作業だっていいじゃないか。
利用者さんができないところは、職員やボランティアがやってもいいかもしれない。
施設の中のボランティアだけでなく、菜園ボランティアがいてもいいだろう。
菜園での活動を介護予防のプログラムにしてもいいだろう。
風呂は薪で沸かして気持ちのいいお湯にしてはどうか。
薪を山から下ろしてくるのはグリーンの仲間たちの役目かもしれない。
それによって、雑木林の整備を進める。
高齢者のために若いもんが働く。
子どもたちが喜ぶようなこともあるだろう。
里山の施設がする福祉が里山をいい形で活用し保全に結びつく。
現代の茗荷村。
そんなことを夢想してみる。
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