[コラム]イキモノのにぎわい
第9回 かいそう
この季節、三浦半島の海岸を歩いていると、白い物体と黒い物体が干されています。
白い物体はダイコン。黒い物体はワカメです。
青い海を臨む砂浜にダイコンが大量に干されている風景もなかなか盛観ですが、
ワカメが干されていると海の風物詩のひとつだなと思います。
三浦半島ではワカメの収穫が3月上旬頃まで続き、3月下旬頃からはヒジキの
収穫がはじまります。ワカメは養殖だけでなく、天然ワカメもあり、塩蔵の他、
天日干しや湯通し等に加工されます。今年は天然ワカメの繁殖量が
例年と比べて多いそうです。
さてこのワカメやヒジキ、「海藻」と「海草」のどちらに当てはまるでしょうか?
どちらも「かいそう」と呼びますが(※)、まったく別物です。
呼んで字の如く、海藻(seaweed)は「藻」で、胞子によって子孫を増やし、
海草(sea grass)は「草」で、種子によって子孫を増やす陸上の草の仲間です。
私たちが食べているワカメやヒジキ、コンブ、モズク、アオノリ、寒天になる
テングサなどは海藻に分類されます。
海藻は、陸上植物とはまったく異なる生物群で、根・茎・葉のような形態が
あっても、それらは機能的には分化していません。日本に産する海藻は
約1400種類が知られています。
海草は、根・茎・葉の区別がつき、花を咲かせます。海藻とは逆に人間が
食べられるものはほとんどありませんが、ジュゴンやマナティー、アオウミガメ
などの主食になっています。日本国内では約20種類が知られています。
この海藻と海草とが密に生育し、「藻場(もば)」(※)を形成します。
藻場は海岸線から沖に約1km、長くても数kmの浅海に分布します。
海のなかの森と想像していただくと分かりやすいと思います。
海藻・海草類は食用としての役割だけでなく、水質浄化や酸素供給などの
機能の他、魚類や甲殻類の産卵や生育場、隠れ場にもなるなど、
沿岸域の生物の生息場所にもなっています。
しかしながら、近年、日本各地で藻場が消滅する「磯焼け」現象の発生等に
より藻場の減少・消失が多く確認されています。
この磯焼けの原因は様々ですが、人間生活がなんらか関わっていることは
間違いないようです。藻場の消失は海棲生物に影響を与えるだけでなく、
地域によってはこれまで収穫できていた海藻がなくなるなど、すでに漁業にも
大きな影響がではじめています。
日本は南北に長い国土で、黒潮と親潮の二大海流があることから海の生物が
豊かで、古くからそれらの恩恵を受け、世界的に見ても日本人ほど海藻を
利用する国民はいないそうです。
海藻や海草は、陸上の植物が盛りを迎える季節とは逆に、この冬の時期に
成長し最盛期を迎えます。海の中の様子を直接見ることは難しいと思いますが、
まずはビーチコーミングしながら、
海の生き物を身近に感じてみてはいかがでしょうか。
(Tanji)
※「海藻」と「海草」は同じ発音のままでは紛らわしいため、海草を「うみくさ」と
呼ぶことが多いようです。NHKの放送では、音で表現するときは同音異義語なので
「ウミクサの海草」「ウミモの海草」という言い方をすることもあるとのことです
(NHK放送文化研究所HP参照)。
※日本を代表する藻場は、コンブ場、ガラモ場、アラメ場、カジメ場、テングサ場、
アマモ場などがあります。
参考文献:
千原光雄 『日本の海藻』 学研 2002
参考HP:
JF全漁連「"藻場・干潟・サンゴ礁・ヨシ原の保全"情報交換サイト」
環境省生物多様性センター「自然環境保全基礎調査」
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